新しい時代の学びの場。
広島叡智学園様
瀬戸内海の豊かな自然が広がる、広島県の大崎上島に2019年に開校し
た、公立の全寮制中高一貫教育校。
最先端の教育を実践しながら生徒の
主体的な学びを促し、海外や地域といった多様な交流・活動が生まれ
る、エディタブルで多様性あふれる学習環境が特徴です。
スペースをプレイスへ。
家具設計で、主体的な学びへと導く。
広島叡智学園様は、「広島県版『学びの変革』アクション・プラン」を実践するモデル校として2019年4月に開校。国際社会のリーダーとなる人材育成の教育を展開する「国際バカロレア(IB)」の認定校として先進的な教育プログラムに取り組んでいます。今回のプロジェクトは行政直轄事業として、広島県教育委員会に「学びの変革推進課」が設立され、地方自治体や各分野の専門家など多様なメンバーが携わり、構想から開校まで5年を費やした大規模プロジェクト。学校の基本構想づくりに教育環境研究所(以降IEE)が参画し、学校関係者と理念や目標を明確化、それらを踏まえて設計者が建築・空間を設計。その空間・環境づくりのための家具や什器計画をプラスファニチャーカンパニーが担当しました。
「『主体的な学び』を支える柔軟で高機能な学習環境」や「多様な人材の協働・交流が自然と生まれる環境」などの施設計画を実現するために、先生はどのような授業を行うのか、生徒にはどのような学び・行動を促したいのか。新しい学びの場づくりには、新しいサイズ、新しい仕様の家具や什器が必要です。「スペースを、エディタブルなプレイスへ」。グループでの学びや一人ひとりの学び、多様な居心地づくりを実現するために、建築設計担当者や教育関係者の方々とのヒアリングを重ねて、固定観念にとらわれない家具や什器の設計を行いました。
異なる空間設計と多様な家具で、
カスタマイズしやすい教室構成。
広島叡智学園様では、教科に応じて授業のクラスター単位が異なるため、学習ゾーンは学習形態に柔軟に対応する自由度が高い教室構成が特徴です。学習ゾーンの中心にある「図書メディアセンター」と教室棟をゆるやかにつなぐのが、オープンスペースの「フレキシブル・ラーニング・エリア(F.L.A.)」。ここには可動式の机や椅子、ソファを設置。図書室の拡張エリアとして寛ぎながら本を閲覧したり、友達と過ごしたり、家具のレイアウトを変更すれば学習成果の展示や発表の場にもなるフレキシブルな空間です。
3つの教室はそれぞれ設計が異なり、多様な活動ができるオープンなLL(ラーニングラウンジ)、扉の開閉でカスタマイズしやすいセミオープンなCS(クラススペース)、静かな空間で勉強に集中できるクローズドなQS(クワイエットスペース)など、学習内容や人数に合わせた使い分けが目的です。例えば、オープンな教室にはF.L.A.同様、可動式の机や椅子を配置して、場をフレキシブルかつ有効活用できるように工夫。QSでは、個の学習を重視するため教職員の声を反映してオリジナル家具を製作しました。
左)探求学習の核となる図書メディアセンターは、階段を座席に、壁のホワイトボードを使ったオンライン授業や発表の場としても活用。周囲に机や椅子もあり自由に過ごすことができる。
上・下)キャスター付きの机や椅子、ホワイトボードで発表の場にもなるフレキシブルな空間(F.L.A.)。リラックスできるソファは友達の気軽なコミュニケーションに。奥に広がっている空間がLL。
異なる3つの教室で構成されている。
学びをもっと自由に、自分らしく。
居心地のいい空間づくり。
主体的な学びにつながる学習環境や多様なコミュニケーションが生まれる場など、一人ひとりのWell-Beingを大切にした空間づくりを意識し、施設のあらゆる場所に多種多様な家具やホワイトボード、プロジェクターを設置しています。開校後の視察では、いろんな場所での活動や授業、休み時間には各々の場所で友達と寛いでいるシーンなど、どの空間も有効的に使われ、のびのびとした生徒の姿が見受けられました。
開校から8年目を迎え、中高全学年が揃い250人近い生徒が学んでいます。第一期卒業生からは多くの生徒が海外の大学に合格、進学し、革新的な教育方法や教育環境が全国からも注目されています。
今回の学校づくりでは、IEEによる基本構想にはじまり、ファニチャーによる家具選定やオリジナル家具の製作、ジョインテックスカンパニーがホワイトボードや特別教室の器具・教材を対応するなど、プラスグループとして連携を図ることで、理想とした学校づくりを実現することができました。
左) QS に導入した60センチ角の机はパソコンを使いながら教材も置けるサイズ。4本脚で振れ止めがなく、どの方向からも使いやすい。教職員との話し合いから生まれたオリジナル。
右上) 机は用途に応じて可動しやすいキャスター付き。長机を囲んでのグループワークにも便利。
右下) 授業や人数に応じてカスタマイズしやすい机や椅子。柔らかいフォルムや明るい色合いは、柔軟な発想や気軽なコミュニケーションのきっかけに。
左上) 生徒用ロッカーを設置したHB(ホームベース)。個人の荷物を教室から切り離すことで、教室の活用の幅が広がる。
左下) 施設の各所に多様な机や椅子を設置。リラックスでき、コミュニケーションが生まれる、誰もが居心地のいい空間を意識。
右上) 開放的な職員室はソファや仕切りを使ったミーティングスペースなど、教員間のコミュニケーションが自然に生まれる家具を配置。
右下) 左がカフェトリウム、右は音楽室。ガラスの間仕切りをなくせばステージのある大空間に。地域との交流スペースとしても活用。
プラスファニチャーカンパニー
デザイナー 濱本 浩二
革新的でグローバルな学校づくりとして家具にもデザイン性を求められましたが、既製品では理想とする空間を適えることが難しく、オリジナル家具を製作しました。とはいえ、教育現場で最優先すべきは子どもたちの安全性です。設計事務所のデザイン案に対しても、ヒアリングと提案を繰り返し、学校関係者の声を反映していくことで、新規格のデザインと安全性を兼ね備えた家具を納品することができました。
プラスファニチャーカンパニー
営業 髙木 一茂
行政主幹の学校づくりは初めての担当。着工から全棟完了まで全三期、五カ年計画という大プロジェクト。校舎と寮とで設計事務所も異なったため、一期目は手探り状態で家具・什器の検討及びスケジュール調整に苦労しましたが、二期目はスムーズに進行できたと思います。学校もオフィスも、居心地のいい空間づくりは共通のテーマ。IEEと共創できた今回の案件は今後のオフィスづくりにも活かしていきたいです。
教育環境研究所
教育環境、学校計画を専門とする民間初の組織として1988年発足。学校のソフトからハードまでコーディネイトし、生涯学習や子育て支援・高齢者施設など地域を支える施設全般に活動。
所長 長澤悟
どこにいても学べる環境において「なぜ学校で学ぶのか」。今、改めて学校の意義が問われ、学校の変革が求められています。教育環境研究所では、専門的視点によって、既存の教育環境にとらわれない学校づくりを提案しています。大切にしているのが学校関係者と理念や目標を共有するプロセスです。新設校で実践したノウハウを既存施設に活かすことで、学校全体をアップデートできればと思います。
主任研究員 廣瀬 和徳
今回のプロジェクトは、最先端の教育を実施するこれまでにない学習環境がテーマだったので、施設設計や家具計画は苦労しました。ファニチャーカンパニーには、オフィス設計の知見と経験からも、オリジナル家具の制作や家具選定など難しいオーダーに応えてもらい助けられました。恵比寿にあるファニチャーのオフィスは、アイデアに溢れていて学校づくりのヒントになりそうです。